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コラム

2022年11月21日病害・微生物

歴史に残る植物の病気3

研究開発部イチゴ担当の本間です。皆さんは風邪のウイルス(今はコロナですか)、虫歯の菌、水虫、などを耳にしたことがあると思います。このように人に感染する病原体には色々な種があります。植物も同様です。今回は植物に病気を引き起こすフユカイな仲間たちを紹介します(図1)。

植物病の病原体には人と同じ細胞の作りをもつ真核生物、人の細胞よりも単純な作りをもつ原核生物、細胞をもたないもの、がいます(表1)。真核生物には菌類や昆虫などが該当します。原核生物には細菌(乳酸菌や酢酸菌の仲間)が該当します。細胞を持たないものにはウイルスとウイロイドが該当します。表1の生物たちを詳しく解説すると膨大な量になるため、ここでは詳細は省略します。

微生物とは微小な生物の総称です。その大きさは種によって様々です。表1の微生物の大きさを比較したのが図2です。植物の1細胞の大きさ約10~100 µm(1 µm=0.001 mm)に対して、菌類の菌糸の先端部分の幅は約2~10 µm、細菌の細胞の大きさは約1~2 µmです。ここまでは光学顕微鏡(小中学校の理科の授業で扱った顕微鏡です)で見ることができます。細菌の1種のファイトプラズマの大きさは約0.1~0.2 µmです。ウイルスは形態が球状や紐状など様々ですが、例えばキュウリモザイクウイルスは直径約30 nm(1 nm=0.001 µm)の球状です。ちなみに新型コロナウイルスは約50~200 nmです。ウイロイドはさらに小さく、ジャガイモに感染するジャガイモやせいもウイロイドは約6 nmです。ファイトプラズマ以下は光学顕微鏡では見えません。結晶化しても小さすぎて、ごみの様です。見るためには電子顕微鏡を使います。

次に有名な病害について紹介します。まず菌類ですが、現在の植物病の約80%が菌類によるとされています。菌類の病害では1993年の本邦でコメ不足の原因となったイネいもち病などがあります。細菌の病害ではアブラナ科の軟腐病をよく目にすると思います。冷蔵庫の中でハクサイがドロドロに腐ったことありませんか?アレです。ウイルスの病害については皆さん世界史で習ったはずです。人類史上初の金融バブル、いわゆるチューリップバブルのチューリップはチューリプモザイクウイルスに感染していました。ウイルス病の花弁が美しいとされていました。
動物による病害にはアブラムシなどの昆虫、線虫、ダニによる吸汁、軟体動物のナメクジやカタツムリによる摂食があります。 2019年11月にアフリカ大陸で発生したサバクトビバッタの蝗害は2022年3月に収束しました(FAO Locust HubのHPより)。人類は何千年もの間、バッタの軍勢と戦い続けているわけです。また昆虫やダニはウイルス、ファイトプラズマを媒介することが多いので、植物の被害はさらに深刻になります。またナメクジやカタツムリは住血吸虫という人に感染する寄生虫を媒介するので、作業者にとって別の意味で深刻です。命にかかわります(本当です)。その他鳥類や哺乳類による食害も植物の病害に含まれる場合があります。
植物による病害は雑草による生育環境の奪い合い、雑草害があります。土中の栄養や水分を雑草に奪われないように、定期的に除草しましょう。ちなみに雑草という名前の植物はありません。人にとって望ましくない植物の総称です。植物に寄生する植物による害、寄生植物害もあります。これも植物の病害に含まれます。1200年に寄生植物ヤドリギが初めて報告されました(Mathiasen et al 2008)。当時は植物が植物を殺すとは考えられていませんでしたので、大発見です。
以上の様に植物の生育において、色々な生物種が敵となります。植物を育てる時にはこれら敵に気をつけましょう。次回は細胞持たぬ病原体ウイルス発見、を紹介します。

参考資料
Mathiasen RL, et al. (2008) Plant Dis. 92 (7): 988-1006.
植物医科学上 難波成任監修 2008
FAO Locust Hub https://locust-hub-hqfao.hub.arcgis.com/

 

著者プロフィール 名前 本間洋平、出身地 東京都渋谷区、専門分野 植物分子細胞生物学、植物生理学、生物化学工学、物理化学、趣味 映画鑑賞、読書 好きな物 オムライス、パフェ

 

本間洋平

著者プロフィール

名前
本間洋平
出身地
東京都渋谷区
専門分野
植物分子細胞生物学 植物生理学 生物化学工学 物理化学
趣味
スポーツジム、サイクリング
好きなもの
和風洋食、中華