1. トップページ
  2. コラム
  3. 病害・微生物
  4. 黄化葉巻病について

コラム

2022年08月03日病害・微生物

黄化葉巻病について

こんにちは。環境科の丹羽です。毎日暑い日が続き、露地栽培での夏野菜の収穫もピークを迎える頃ではないでしょうか。そんな中、やはり心配なのが野菜の病気ですね。生育する環境によって植物には様々な病気が発生します。植物に病気を引き起こす原因もとても多様で、菌類、細菌類、ウイルス、害虫そしてセンチュウなどがあります。今回のコラムでは、先日のつのちゃんの栽培日記でも紹介された我が家のミニトマトの葉にも飛んできているタバココナジラミ(図1)が媒介する「トマト黄化葉巻病」についてお話しします。

図1.タバココナジラミ
図1.タバココナジラミ

トマト黄化葉巻病とは?
 病徴は、葉が上または下に巻き、葉縁・葉脈間が黄化して株全体が萎縮し生育が著しく停滞します(図2)。さらに開花しても結実しづらく、収量も激減します。世界各地で発生が確認される重要病害の一つで、日本では、平成8年頃に九州・東海地域で初めて確認されて以来、地域は拡大し、37都道府県において発生が報告されています(花田, 2012)。この病気はトマト黄化葉巻ウイルス(Tomato yellow leaf curl virus: TYLCV)によって引き起こされる植物ウイルス病で、タバココナジラミの吸汁によってのみ媒介されます(土壌からの伝染や種子伝染、剪定作業などによる伝染は起きません)。タバココナジラミの発生が増加する夏の時期に被害が拡大します。

図2.黄化葉巻病を発症したミニトマト 図2.黄化葉巻病を発症したミニトマト

主な防除方法
 トマト黄化葉巻病の発生を防ぐには、兎に角TYLCVを保毒したタバココナジラミを防除することが最も重要となります(トマト黄化葉巻病の総合防除マニュアル)。施設栽培の場合は、開口部に防虫ネット(目合い0.4 mm以下)を展張してタバココナジラミの「侵入」を防ぎます。既にタバココナジラミが侵入している場合や露地栽培では、これ以上「増やさない」よう黄色粘着板(図3)の設置や定期的に薬剤散布を行うことが重要です。さらに、こうしたタバココナジラミの防除に加えて、「耐病性品種の利用」も被害の軽減には有効な方法です。

図3.黄色粘着板
図3.黄色粘着板

園研のトマト黄化葉巻病耐病性品種「かむり」
 現在、トマト黄化葉巻病に耐病性を持つ素材(系統)を使って育種された複数の大玉およびミニトマトの耐病性品種が市販されています。園研においても昨年度、黄化葉巻病耐病性ミニトマト「かむり」の配布を開始しました(「かむり」の栽培特性はコチラ)。抵抗性遺伝子Ty-3aを保持しており、植物体にTYLCVは感染するものの、病徴は抑制されます。また、日本国内で発生するTYLCVのイスラエル系統とマイルド系統の両方に耐病性を示します。図4は、「かむり」と黄化葉巻病感受性品種にTYLCVを接ぎ木接種後(図5)、3週間栽培した時の写真です。感受性品種では、著しい病徴が認められますが、「かむり」では葉の黄化や葉巻はほとんど認められません。

図4.TYLCVに対する「かむり」および感受性品種の反応  図4.TYLCVに対する「かむり」および感受性品種の反応

 

図5.接ぎ木接種法によるTYLCVの接種

  図5.接ぎ木接種法によるTYLCVの接種

 一方で、耐病性品種の利用には注意も必要です。Ty-3aを持つ耐病性品種では、病徴が出ていなくてもウイルスを保持しています。それが感染源となり、特に幼苗期にタバココナジラミの防除を怠ってしまうと、気づかないうちに感染が拡大してしまうことがあります。実際には耐病性品種であっても、高温や着果負担など植物体にストレスがかかるような時期には病徴が現れることがあるので、注意が必要になります。また、耐病性を持たない品種に感染が広がる可能性も考えられます。前述のタバココナジラミの防除を行なったうえで耐病性品種を利用することが大切です。

 東南アジアは、TYLCVを含めたベゴモウイルス属のホットスポットの一つと言われています(Koeda et al., 2015)。温暖化などの影響でタバココナジラミの更なる増加やTYLCVの新たな系統の出現なども懸念されます。園研ではこうした状況に対応すべく有用な系統の選抜や新たな耐病性品種の育種を続けていく必要があると考えています。

 

参考文献
花田 薫 (2012), 植物ウイルスの特性とその保存について. 微生物遺伝資源利用マニュアル 31: 1-66.
トマト黄化葉巻病の総合防除マニュアル (2009), () 農研機構 野菜茶業研究所.
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/naro-se/tomato_yellow_leaf_manual_h215.pdf(参照日2022.8.3
Koeda et al. (2016), Mixed infection of begomoviruses on pepper plants at Northern Sumatra, Indonesia. Trop. Agri. Dev. 60 (2): 59-64.

 

 

 

 

丹羽理恵子

著者プロフィール

名前
丹羽理恵子
出身地
愛知県春日井市
専門分野
土壌微生物学、植物病理学
趣味
サイクリング、海外ドラマを観ること、釣り、ミニトマト栽培

Latest Articles最新の記事