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コラム

2022年06月14日病害・微生物

肥料価格高騰の救世主?! –リン酸肥料を節約できる菌根菌の紹介–

こんにちは。研究開発部環境科の丹羽と申します。

今日の不安定な国際情勢により肥料の価格が高騰し、農作物の生産に大きな影響を与えていますね。そんな中、この危機を打開する救世主となりうる?アーバスキュラー菌根菌(以下菌根菌)という植物と共生するカビの仲間をご紹介します。

菌根菌は、陸上のおよそ8割の植物種に共生でき(ただしアブラナ科、ヒユ科およびタデ科の植物とは共生しません)、なんと4億年前の植物の化石からも菌根菌の痕跡が発見されています。この菌のすごいところは、土壌中の植物の根の届かないところまで「菌糸」を伸ばし、より遠くの「リン酸」を吸収し植物の根に運んでくれるところです(図1)。つまり、リン酸肥料を減らして、根の周りがリン酸欠乏の状態になったとしても、菌根菌が根に感染していれば、根の代わりに菌糸がリン酸を吸収して作物に与えてくれるので、作物は元気に生育できるのです。

農業現場での菌根菌の利用方法は、大きく分けると2種類あります。1つ目は、市販の「菌根菌資材」を使う方法です。菌根菌は土壌改良資材として25年以上も前に登録され、市販されています。育苗培土に資材を混和した育苗接種や、圃場において播種や定植をする植穴に資材を入れる植穴接種で使用します。2つ目は、「前作効果」を利用する方法で、緑肥作物を栽培しもともとの土壌に存在する「土着の菌根菌」を増殖させておいて、次に作物栽培を行うことで、菌根菌の効果を得る方法です。 

しかしながら、リン酸がたくさん蓄積されている(リン酸肥料がたくさん投入されている)土壌だと植物根への菌根菌の感染が阻害されてしまい、その効果を得ることができません。どのような土壌環境でどのような栽培管理をすれば、この菌根菌の能力を十分に活用することができるのかについて理解することは、菌根菌の効果的な活用のためにとても重要です。園研では、これまでに、様々な研究機関や大学と共同で菌根菌の機能を最大限利用するための環境条件や栽培体系などについての研究を進めてきました。 

肥料価格の高騰に加えて、農水省が20215月に発表した「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに化学肥料30 %削減が目標の1つとして掲げられています。化学肥料に依存せず環境負荷の少ない持続可能な農業への転換が迫られる中で、菌根菌のような有用な微生物の効果的な活用は突破口の1つになると考えています。

丹羽理恵子

著者プロフィール

名前
丹羽理恵子
出身地
愛知県春日井市
専門分野
土壌微生物学、植物病理学
趣味
サイクリング、海外ドラマを観ること、釣り、ミニトマト栽培