1. トップページ
  2. コラム
  3. 病害・微生物
  4. 歴史に残る植物の病気1

コラム

2022年10月05日病害・微生物

歴史に残る植物の病気1

 はじめまして。研究開発部イチゴ担当の本間と申します。「コロナ」という単語を耳にしない日はない日常を皆さんはどうお過ごしですか。100年前のスペイン風邪が歴史の教科書に載っているように、新型コロナウイルス感染症COVID-19も未来の歴史の教科書に確実に載ることでしょう。

 ところで植物も病気になります(コロナウイルスには感染しませんが)。その中には文化として定着したもの、社会現象になったもの、文明崩壊の引き金になったと言われているものもあります。そこで数回に分けて植物の病気に関する事例を紹介します。今回は植物の病気の被害量について紹介します。

 植物の病気は単に病原菌が存在すれば必ず発生するわけではありません。植物自身の抵抗性や病原菌の植物への感染のしやすさ、発病しやすい環境など色々な要因が関わっています。病気が発生する要因とその被害量をモデルにしたのが図1のピラミッドです。このピラミッドの体積が被害の量を表しています。作物を栽培するうえで、病原菌の侵入を防ぐこと、病原菌に抵抗性をもつ植物を用いること、発病しにくい環境を保つこと、病気を早めに発見することなどが被害を抑える重要な点になります。

 世界の農作物の年間生産量の約1/3が病害などで失われていると言われています(図2)。この数字は病害や虫害などへの対策をした場合です。


 では対策をしなかったらこの数字はどうなるでしょう?表1は世界の主要作物6種の1988年から2003年までの予定していた収穫量に対する、平均減収率の試算です。病害などへの対策をした場合でも3割から4割の減収ですが、対策を怠った場合の減収は5割を超えると見積もられました。

 本邦ではどうでしょう?表2は1990年から2006年までに行われた試験結果です。慣行的な管理を行った試験区に対する、病害などへの対策をしない区の平均減収率です。どの作物でも大きく減収していますね。

 

 植物を栽培する時に、病害などへの対策をしっかり行うことはとても大切で次回は植物の病気の歴史についてです。何時から人類は植物の病気を認識してきたのでしょうか?

 

 

本間洋平

著者プロフィール

名前
本間洋平
出身地
東京都渋谷区
専門分野
植物分子細胞生物学 植物生理学 生物化学工学 物理化学
趣味
スポーツジム、サイクリング
好きなもの
和風洋食、中華