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コラム

2022年11月21日園芸あれこれ

園芸での刃物の手入れのあれこれ

今回は、園芸初心者を対象とした園芸講座のコラム第4弾として、園芸での刃物の手入れについて、あれこれと紹介していきたいと思います。
園芸でよく利用される刃物は、ハサミ、包丁、くわなどがあげられるかと思います。こういった刃物はときおり簡単なお手入れをしてあげることで、長く使え、切れ味が悪い事でおこるトラブルやストレスを回避できますので、いままであまり手入れをしていなかったという方に向けて、簡単に実践できるものを以下にいくつか紹介させて頂こうと思います。

まずハサミですが、ここでは汎用的に使われている芽切狭を例に挙げたいと思います。芽切狭あるいはガーデニングバサミ等の名称で販売されているこのハサミは、手入れや収穫、資材の切断等に利用されています。材質は研ぎやすく切れ味をだしやすい炭素鋼、錆に強いステンレス鋼が一般的です(図1)。



図1 目切狭(左:ステンレス鋼、右:炭素鋼)

日々のお手入れとして、どちらの素材のハサミも使用後は丁寧に洗い、水気をふき取ってから潤滑スプレーなどで「注油」を行うことで、サビ防止や切れ味を長く維持することができます。
また、汚れがひどいときやサビが出てきた際には「サビ・ヤニ落とし」を専用クリーナーで行うと簡単です。特に刃の裏側(合わさる部分)をきれいにしておくことがかみ合わせを良く保ち、切れ味の維持に重要です。植物の病気のまん延防止の為「除菌」も同時にできるものを選択しても良いと思います(図2)。



図2 専用クリーナを吹きかけてふき取るだけでも効果が見て取れる

クリーナー使用後は潤滑油が分解されている為、カシメ部などに丁寧に注油します。これらサビ落としと注油を身近な5-56で行っても大きな問題はないかと思いますが(樹脂に付着しないよう注意)、食べる物への使用機会があれば食品機械用の潤滑スプレーというものもあります。

さらに「刃研ぎ」について、特に切れ味の落ちやすい炭素鋼のハサミでは、シャープナーを用いて簡単にでも研ぐ作業を行えると良いかと思います。研ぐ際は、基本はハサミの外側のみを研ぎます。下手に内側を研ぐとかみ合わせが悪くなり、逆に切れなくなります。
まずシャープナーをあて(荒砥ぎ面と仕上げ面がある場合は荒砥ぎから、平面と曲面がある場合は平面を使用)角度を決めたら、その角度を維持しながら、ジグザグに動かしながら研ぎます(図3)。



図3 目切狭を研ぐ様子

シャープナーを当てる角度は45度くらいを基本に、寝かせると切れ味はあがるが欠けや切れ味低下が早くなることを頭に入れたうえで刃物と用途に合わせてちょうどよい角度を見つけると良いです。研ぎ方のコツは、刃に向かって遠ざかるように引く際に力を入れ、押しながら戻す際は力を入れないやり方がやりやすいと思っております。
刃の裏面にまんべんなくバリが出るように研ぎ、最後に平面のシャープナーで優しく刃の裏面を一度だけ撫ででバリ取りしたら終了です。

次に包丁についてです。ハサミは裏面が平らでしたが、包丁は両側から刃をつけてある両刃のものを一般的に使っているかと思います(出刃や柳葉のように片刃になっている包丁もあります)。基本的なメンテナンスは素材に関係なく、使用後に汚れを落とし、よく水分をふき取ることですが、研ぎ方は両刃ですので少し変わってきます。
ここでは砥石を用いた研ぎ方を紹介します。まず砥石は炭素鋼であれば1500~2000番手のもので研ぎ、切れ味にこだわるのであればさらに3000番以上の砥石を仕上げに使います。ステンレス鋼は削りにくいため1000番手のみで荒く研げばよいですが、めったに研がなくて良いかと思います。
この砥石を使用前に水に10分以上つけておき、滑らない安定した場所に置きます。刃身の側面全体が水垢やヤニなどでくすんでいる場合、切ったものの離れが悪くなるため角度はつけずざっと研ぎます。研ぐ際には、砥石が乾いてきたら適宜少量の水をかけながら行います。
次に、刃の部分ですが、45度よりさらに15度くらい寝かせるのを基本に、角度を決めます。決めた角度を維持するのが重要です。利き手でしっかりと包丁を持ったら、反対の手の指を数本刃に近い側面部分を抑えるようにあて、上下に研ぎつつ、少しずつ抑える指を刃の根元から先にずらしていきます(図4)。



図4 包丁を研ぐ様子(左)とバリの確認(右)

刃に対して直角に動かすのではなく、包丁を砥石から傾けた状態で上下に研ぎます。裏側にうっすらとかつまんべんなくバリがでれば研げていますので、指で引っ掛かりを確認したら、裏側の刃も同様に研ぎます。コツは、刃を鋭い方に向かって引くときのみ力を入れて研ぐことです。
最後に両刃が均等に削れているかしっかり見て確認できれば、バリを落として終了です。このバリがきちんと落とせていないと全然切れない為、手で撫でてよく確認します。

以上の手順は一例ですが、刃物を用いる際は、洗い、注油、時々の刃研ぎなどを行う事で、長く、良い状態で道具を使えますので、是非お勧めしたいと思います。来季の作付けの計画をたてつつ、道具のメンテナンスをしてみてはいかがでしょうか?

 

 

長廣匠亮

著者プロフィール

名前
長廣匠亮
出身地
山口県山口市
専門分野
蔬菜園芸学、植物育種(カボチャ)
趣味
登山、釣り、スノボ、旅
好きなもの
お魚、お肉、甘いもの