理事長に就任して感じたこと
私は前職の千葉大学を2021年3月に退職し、4月より園研の理事長・所長に就任しました。
この1年間は、分からないことだらけで、コロナ禍の影響も大きく無我夢中の日々でした。
それでも、1年が経過して少しずつ周囲のことや園研の将来のことを考える余裕が出てまいりましたので、今回は現在の所感を述べさせていただきます。
私は千葉大学園芸学部に、1975年に入学して以来、通算46年間園芸学部・園芸学研究科に在籍・在職していました。まさに園芸学部一筋の教育・研究生活を送らせて頂きました。
幸いなことに、教育や研究面では好きなことを思う存分させて頂きました。
特に定年までの10年間は柏の葉も含めて植物工場に係る仕事を中心に充実した期間を過ごすことが出来ました。
しかしながら、研究対象は主として野菜の栽培技術(環境制御や養液栽培も含む)一般であり、現在の園研の仕事に直接的に関係する育種関係の仕事にはそれほど関与してきませんでした。
実は、大学院に在籍中に亡父の友人でもあった故小坂椰子朗氏から「園研に来ないか?」と園研への就職を打診されたことがあります。
その際の小坂氏の言葉が今でも頭に残っています。それは、「育種は面白いぞ!栽培では、収量・品質を20%向上させることが出来れば大成功だが、育種技術により収量・品質が倍増することが実際にある。」ということでした。
当時学生であった私には、その意味が十分理解できていませんでしたが、その後、植物工場も含めて栽培環境や栽培技術の最適化だけでは、革新的な生産性の向上は期待できないことに気が付きました。
オランダ等の事例を見ても、栽培環境・技術の改善と育種の両輪がうまく回って初めて十分な成果が期待できることを痛感しました。
実際、最後の数年は人工光型植物工場専用レタス品種の育成の仕事にも従事しておりました。
今感じていることは、園研も含めて日本の育種の現場では、選抜評価を行う施設・設備が古いままで、先端の生産者だけでなく多くの一般生産者の施設・設備よりもその性能が低い状態が多いということです。
このような選抜環境では、次世代の施設園芸等に向く革新的な品種は出てき難いと思われます。
今後は業界を挙げて、施設・設備の更新を進めるとともに、最新のフェノタイピング技術やデータマイニング技術も積極的に取り入れていく必要があるとも考えています。
もちろん、経営的な観点から限界があることは事実ですが、そのような方向性をしっかりと持つことが重要だと考えているところです。
著者プロフィール
- 名前
- 丸尾 達
- 出身地
- 静岡県菊川市
- 専門分野
- 蔬菜園芸学
- 趣味
- 登山、スキー
- 好きなもの
- 甲斐犬(モモ)
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