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コラム

2022年07月01日論文紹介

カボチャ立体栽培について

近年、栽培面積を減少させているメロンやキュウリなどのウリ科野菜の中で、比較的安定した周年需要のあるカボチャについて、施設を利用した立体栽培の方法を紹介する記事や論文を目にすることがあります。一般的なメリットとしては、反収の増加は前提として、ハウスを利用するため環境変化をうけにくく、安定生産でき秀品率も高いこと、ウリ科作物の中では低温期の暖房コストが安くてすむこと、病害虫のトラブルを抑えやすいこと、高単価の時期に出荷できること、作業姿勢の改善などが挙げられております。加えて、露地での這い栽培と比較して、植物体の管理が容易なため、高齢者や経験の浅い方にも安心して作業をお願いしやすいなどのメリットもあるかと思います(図1)。

図1.カボチャの栽培の様子 左:露地での這い栽培、右:施設内での立体栽培の様子 

這い栽培では、蔓を踏んだり葉を折ったりしないように注意深く管理作業を行う必要があります。腰を曲げた状態での作業はかなりの重労働です。立体栽培では、植物体の様子も視認しやすく、管理作業が容易です。交配開始から40日経過していますが、目立った病害や葉の痛みも見られません。

園研では2019年より、カボチャの採種安定化の技術開発に取り組んでおり、その中で立体での栽培方法の確立、作業の効率化、高収益化の検討に重点を置いて研究を進めてきました。 ハウス内での栽培は、露地での栽培と比較して、天候や病害虫による影響を抑えやすいというメリットがあります(図2)。


図2.露地圃場で発生した被害 左:ホモプシス根腐病が発生した圃場、右:猛暑と干害による萎れが発生した圃場

また、種子をとることを目的とした採種栽培においては、目的としない花粉が運ばれてくるリスクを抑えることができることも大きなメリットとなります。一方で、青果栽培への適用を考えると、どうしても採種栽培よりも単価が低いことから、それほどメリットを感じないかもしれません。

しかし、近年の気候変動や生産者の高齢化、雇用維持、販売手法の多様化、遊休施設の増加など多様な要素があるなかで、施設を利用した立体栽培の可能性についてあえてコラムの題材として取り上げてみることとしました。

園研において立体栽培を始めるにあたり、赤池ら(2016)の報告を参考にさせていただきました。ブドウ棚を利用して栽培する甲州天空カボチャをご存じの方もいらっしゃると思いますが、この報告でも無加温ハウス内でブドウ棚を利用した安定生産技術の開発の為、栽植密度、誘引整枝方法、着果節位についての最適化のための試験を行っております。園研でも初期の栽培設計時に参考にし、その後試験を繰り返し、以下のような知見を得ましたので記載させて頂きます。

まず圃場の前提条件として、センチュウやホモプシスといった土壌病害虫の防除が十分である水はけのよい土壌であることが必要となります。

次に適正な栽植密度ですが、品種と栽培時期によるところが非常に大きいと感じております。這い栽培において小葉で節間が伸びすぎず、雌花着生節率が高い品種が立体栽培に向いています。これは単収増加の為の密植や、つる降ろしや下葉かきといった大きな手間を軽減する上で重要です。またハウス条件下でも肥料や水にそこそこ鈍感であることも密植に重要な要素です。

栽培の時期に関しては、関東平野を基準とすると、冬季の栽培は燃油代がかさむため現実的ではなく、5~6月収穫を狙う春作と、冬至を狙う秋作であれば、燃料の使用を最小限に抑えつつ、高単価の時期に出荷が可能です。ただし、秋作は終盤に日射の条件が悪く、春作の3割減に近い粗植が求められるかと思います。

参考までに、所内採種試験では、コンパクトな草姿の系統を定植する際、現状春作では株間25cm、畝間2.4mの2条植え、1本仕立て1果着果(3000株/10a)で安定した生育が得られ、採種量で35万粒以上/10a、果実収量では4~5t/10aを栽培の成否の基準として考えております。

また、勘どころとして、通常のハウス内カボチャ這い栽培に比べ、開花期前からの積極的な通路かん水が必要なこと、生育初期は抑え気味の管理をしてコンパクトな草姿かつ雌花数を稼ぎ、高節位での1果着果を行うことなどが安定生産に有効であることも分かってきました。

カボチャ立体栽培は、今後さらなる技術開発や検討の余地が多くあり、園研でも検討を進めていければと考えております。いつか企画展示など皆様にお見せする機会があるかもしれません。 以上あらましではありますが、これからカボチャ立体栽培を検討する方々の参考になる部分が少しでもあればと思っております。

 

参考文献 赤池一彦・中村知聖・小澤明子(2016)「無加温ハウスを利用した抑制カボチャ立体栽培の仕立て方法」山形県総合農業技術センター研究報告 8号 p.29-35

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長廣匠亮

著者プロフィール

名前
長廣匠亮
出身地
山口県山口市
専門分野
蔬菜園芸学、植物育種(カボチャ)
趣味
登山、釣り、スノボ、旅
好きなもの
お魚、お肉、甘いもの

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